機械学習におけるクラスタリングとは?メリットや効果的な手法を紹介

クラスタリングとは、データを類似性に基づいてグループ化することです。 教師なし学習の一種であり、データにラベル付けされていないため、様々な分野で活用されています。 本記事では、クラスタリングの基本から分類との違い、異なる種類や手法、メリット、実践事例まで幅広く解説します。

クラスタリングの基本とは?

クラスタリングとは、類似したデータポイントをグループ化して整理するプロセスです。クラスタリングと分類の違いは、クラスタリングでは事前に定義されたカテゴリーがないことです。

クラスタリングには、k平均法、階層クラスタリング、密度ベースクラスタリングなど、さまざまな種類があります。クラスタリングは、データマイニング、機械学習、パターン認識などのさまざまな分野で使用されています。

分類との違いを理解する

クラスタリングと分類の主な違いは、分類はすでにラベル付けされたデータを使用して新しいデータのラベルを予測することを目的としているのに対し、クラスタリングはラベル付けされていないデータを類似性に基づいてグループ化することを目的としている点です。

分類の例としては、スパムメールのフィルタリングや画像認識などが挙げられます。一方、クラスタリングの例としては、顧客のセグメント化やドキュメントの分類などが挙げられます。

クラスタリングの種類

クラスタリングには、大きく分けて階層的クラスタリングと分割型クラスタリングの2種類があります。階層的クラスタリングは、データを段階的にグループ化したり分割したりしていく手法です。一方、分割型クラスタリングは、データをあらかじめ定められた数のグループに分類する手法です。

階層的クラスタリングには、さらに上位クラスタと下位クラスタの関係を表す樹形図を作成するアグロメレイティブ法と、下位クラスタを逐次分割していくディビシブ法の2種類があります。

分割型クラスタリングには、k平均法、EMアルゴリズム、DBSCANなど様々な手法があります。k平均法は、データをあらかじめ指定された数のグループに分類する方法であり、最も単純なクラスタリング手法の一つです。

EMアルゴリズムは、データに含まれる潜在的な変数を考慮してクラスタリングを行う手法です。DBSCANは、データ密度に基づいてクラスタリングを行う手法であり、ノイズデータに強いという特徴があります。

クラスタリング手法の利点とは?

クラスタリング分析は、データ内のパターンを抽出し、類似したデータポイントをグループ化することで、市場をより深く理解し、効果的なマーケティング戦略を立てるのに役立ちます。主な利点は以下の通りです。

  • 市場のターゲットを選定する能力
  • 競合との差別化戦略の実行

上記に挙げた利点について、以下で詳しく説明します。

1.市場のターゲットを選定する能力

市場分析やマーケティングにおいては、顧客を特定の属性(年齢、性別、ライフスタイルなど)に基づいてグループ分けすることで、ターゲット市場の選定や顧客分析に役立てることができます。

例えば、ECサイトでは顧客の購買履歴をクラスタリングすることで、特定の商品を好む顧客グループや、高額商品を購入する顧客グループなどを分析することができます。これらの分析結果をもとに、ターゲット顧客に合わせた商品やサービスの提案、広告戦略の策定、顧客満足度の向上などの施策に活用することができます。

このように、クラスタリングは市場分析やマーケティングにおいて顧客をターゲット選定に役立てることができます。

2.競合との差別化戦略の実行

クラスタリングの利点を最大限に活用するには、競合との差別化戦略を策定することが不可欠です。クラスタリングによって得られた顧客セグメントは、そのニーズや嗜好に基づいて個別のアプローチを可能にします。以下は、競合との差別化戦略として有効な方法です。

  • 個別のマーケティングメッセージの配信

各セグメントのニーズに合わせたマーケティングメッセージを作成し、適切なチャネルを通じて配信することで、顧客の心に響く効果的なマーケティング活動を展開できます。

  • 製品やサービスの差別化

各セグメントのニーズに合わせた製品やサービスを開発・提供することで、競合との差別化を図り、顧客満足度を高めることができます。

  • 価格戦略の最適化

各セグメントの価格に対する感度を考慮した価格設定を行うことで、収益の最大化を図ることができます。

  • 顧客体験の向上

各セグメントのニーズに合わせた顧客体験を提供することで、顧客ロイヤルティを高めることができます。

クラスタリングは、競合との差別化戦略を策定するための強力なツールです。顧客セグメントの特性を深く理解することで、効果的なマーケティング活動や製品開発、価格戦略、顧客体験の向上を実現することができます。

階層的クラスタリングの手法について

階層的クラスタリングは、データを段階的にグループ化していく手法です。各段階で最も類似している2つのクラスタを統合していくか、最も類似していないクラスタを分割していきます。この手法にはいくつかの種類がありますが、ここでは代表的な4つを紹介します。

  • 群平均法
  • ウォード法 (最小分散法) 
  • 最短距離法
  • 最長距離法

これらの手法はそれぞれ特徴があり、データの種類や目的に応じて選択する必要があります。次のセクションでは、各手法についてさらに詳しく説明します。

階層的クラスタリング手法の群平均法

群平均法は、各クラスタに属するデータ点の平均値を新しいクラスタの中心として用いる階層的クラスタリング手法です。 この手法は、データ点の分布が球状である場合に適しており、アウトライヤーの影響を受けやすく、データ点の数が少ないクラスタとデータ点の数が 多いクラスタのマージが発生しやすいという欠点があります。

ウォード法(最小分散法)を理解する

ウォード法はクラスタ内のデータ点の分散を最小化することを目指しています。その特徴は、各クラスタを単一のデータ点として扱い、2つのクラスタをマージすることで生じる分散の増加量を計算することで、最も分散の増加量の小さいクラスタ同士をマージしていきます。

分散は、データ点とそのクラスタの中心の平均との距離の二乗の平均を表します。クラスタ内のデータ点の分散が小さいということは、データ点がクラスタの中心に集中していることを意味し、クラスタがよりまとまっていることを示します。

ウォード法は、アメリカの心理学者Joseph H. Ward Jr.によって開発されました。さまざまな分野で利用されており、生物学、経済学、マーケティングなどがあります。ウォード法は、RやPythonなどの統計ソフトウェアで実装されています。

ウォード法と他の階層的クラスタリング手法との比較で、ウォード法は、他の階層的クラスタリング手法である群平均法や最短距離法と比較して、分散を最小化することを目指しているため、よりまとまったクラスタが得られる傾向があります。しかし、ウォード法は計算時間がかかる場合があるため、データのサイズが大きい場合は、群平均法や最短距離法が適している場合があります。

最短距離法の概要

最短距離法は、データ点とそのクラスタの中心点との間の距離を最小化するようにクラスタを形成します。

各データ点について、すべてのクラスタの中心点との距離を計算し、最も近いクラスタに割り当てます。この処理をすべてのデータ点に対して繰り返し行うことで、クラスタが形成されます。

最短距離法は、データ間の距離を簡単に計算できるため、最も広く使用されているクラスタリング手法の一つです。しかし、この手法は、データのサイズが大きくなると計算時間が長くなるという欠点があります。

また、最短距離法は、データの分布に影響を受けやすいという問題もあります。例えば、データが偏った分布をしている場合、中心点から遠いデータ点は、近いデータ点よりも遠いクラスタに割り当てられる可能性が高くなります。

これらの欠点にもかかわらず、最短距離法は、さまざまな分野で広く使用されているクラスタリング手法です。

最長距離法の特徴

最長距離法は、クラスタリングの対象となるデータの中で、最も距離が離れている2つのデータからクラスタリングを開始する手法です。具体的には、以下の手順でクラスタリングを行います。

  1. データの中で最も距離が離れている2つのデータを見つけ、それらを1つのクラスタにまとめます。
  2. 次に、残りのデータの中で、最も距離が近いデータを見つけ、1.で作成したクラスタに追加します。
  3. 2.の手順を繰り返し、すべてのデータがクラスタに属するまで続けます。

最長距離法は、他の階層的クラスタリングの手法と比較して、以下の特徴があります。

  • データの分布に影響を受けにくい: 最長距離法は、データの分布に影響を受けにくいという特徴があります。そのため、データの分布が偏っている場合でも、適切なクラスタリング結果を得ることができます。
  • 外れ値の影響を受けやすい: 最長距離法は、外れ値の影響を受けやすいという特徴があります。そのため、データの中に外れ値が含まれている場合、適切なクラスタリング結果を得ることができない可能性があります。

最長距離法は、以下の場合に適しています。

  • データの分布が偏っている場合
  • 外れ値の影響を最小限に抑えたい場合

最長距離法は、以下の場合に適していません。

  • 外れ値の影響を受けやすい場合
  • データの分布が均一である場合

クラスタリングの実践事例

クラスタリングは、機械学習における教師なし学習アルゴリズムの一つです。教師なし学習とは、教師データ(ラベル付きデータ)を使用せずに、データからパターンや構造を学習する手法のことです。クラスタリングは、教師データを使用しないため、データの分類や予測を行うことができます。

ここではクラスタリングの実践事例を紹介します。

1.ECサイトでの顧客分析の例

クラスタリングは、ECサイトにおける顧客分析にも有効活用されています。例えば、購入履歴や閲覧履歴などの顧客データから、潜在顧客をグループ分けすることで、より効果的なマーケティング戦略を立案することができます。

具体的には、以下のような分析が可能です。

  • 顧客の購買傾向分析: 購入頻度や購入金額、購入商品カテゴリーなどを基に、顧客を異なるクラスタに分類することで、各クラスタの購買傾向を把握できます。これにより、各クラスタに応じた商品レコメンドやプロモーションを展開することが可能になります。
  • 顧客の離反予測: 購買間隔や購入金額の変化などの特徴量から、離反リスクの高い顧客を特定することができます。これにより、離反防止のための施策を事前に講じることができます。
  • 顧客のペルソナ作成: 各クラスタの特徴から、典型的な顧客像(ペルソナ)を作成することができます。これにより、よりターゲットを絞ったマーケティング戦略を立案することが可能になります。

このように、クラスタリングを活用することで、ECサイトにおける顧客分析の精度を高め、より効果的なマーケティング戦略を立案することが可能になります。

2.画像処理における減色処理

画像処理において、減色処理とは、色の数を減らしながら画像のサイズを小さくする手法です。これは、画像の解像度を下げたり、ファイルサイズを小さくしたりするために用いられます。

減色処理には、さまざまな手法が存在します。代表的な手法には、以下のものが挙げられます。

  • 平均化法: 複数のピクセルの色を平均化して、その平均値を新しいピクセルの色に設定します。
  • 分散法: 複数のピクセルの色の分散を計算し、分散が大きいピクセルを削除します。
  • 最頻値法: 複数のピクセルの色の中で、最も多く出現する色を新しいピクセルの色に設定します。

減色処理は、画像サイズを小さくすることができるため、Webサイトやメールなど、高速なデータ転送が必要な場面で有効です。また、画像サイズの縮小は、画像処理の速度向上にもつながります。

ただし、減色処理は、色の数を減らすため、画像の品質が低下する可能性があります。特に、色の数が少ない画像や、色の濃淡が激しい画像の場合、品質の低下が顕著になります。

減色処理を行う際には、品質とサイズのバランスを考慮することが重要です。また、画像の用途に応じて、適切な手法を選択する必要があります。

まとめ

クラスタリングは、類似するデータ点をグループ化して、データの構造を理解するための機械学習手法です。データを分類するのではなく、無数のデータパターンの中から潜在的なパターンを見つけ出すことで、市場調査や顧客分析、画像処理など、さまざまな分野で活用されています。

この手法の利点は、データの隠れた構造を明らかにすることで、新たなビジネスチャンスの発見や、業務の効率化などに役立つことです。例えば、ECサイトでの顧客分析では、クラスタリングによって顧客を購買行動や嗜好性によってグループ分けすることで、より効果的なマーケティング戦略を立案することができます

クラスタリングは、データ分析において強力なツールです。適切な手法を選択することで、データの隠れた構造を明らかにし、新たなビジネスチャンスの発見や、業務の効率化に役立てることができます。